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黒沢清監督にコメントをいただきました

黒沢清監督に映画『適切な距離』上映にあたり、コメントをいただきました。ありがとうございます。

「ふとのぞき見した日記帳の中のささやかな異変・・・といった小ぶりな冒頭から始まるが、あれよあれよと密度を増して・・・ 最後に私はその圧倒的な分厚さに押し潰されそうになっていた。本当にこれが自主映画なのか。 日本映画であることすらはるかに超越し、文学と演劇と映像とが何層にも重なった巨大な映画の山脈をなしているのだ。 これをまだ30才そこそこの若者が作ったということが今でも信じられない。」黒沢清(映画監督)

○日時
2月28日(火)
○場所
映画美学校試写室
(住所:〒150-0044東京都渋谷区円山町1-5KINOHAUS地下1階)
○時間
15:30~
(※会場は15:00~)
○入場条件
試写会用フライヤーを持参頂くか、下記のアドレスに「試写会予約希望」と書いたメールを送って頂くかが必要となります。Twitterにて@tekisetsuあてにダイレクトメッセージも可能です。入場無料。
○イベント
監督・キャストによる挨拶の他、ゲストを招いたトークイベントも企画中。
○お問い合わせ
ご予約、ご質問、いつでも気軽にご連絡下さい!
bluecheesefilm@gmail.com
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2012-01-31 : 試写会情報 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

前作『美しい術』について

前作『美しい術』について

どうも、大江です。
今日は僕の処女作『美しい術』について書きます。『適切な距離』はこの作品があったからこそ、それを踏まえて創作しました。
とはいうものの僕は基本的に物事をすぐ忘れるという最悪な人間ですので、作った時とは違うこと言っていたらすいません。

この映画はほんま手探りでした。カメラを置く場所とかカットを割るとか、いちいちなんでなんやろうとか考える面倒くさい奴でした。

物語がない、とか良く批判されました。でもこれを凄く気に入って下さる人もいました。
物語はゼロを探して作ったというのがあります。ずっと展開できないことに足掻く愛すべき人達です。シンプルに映画ってなんやろうと考えるといらないものが余りに多いです。それをできるだけ削って残ったものを描きたかったです。そこに映った人が動くことだけを観て欲しくなりました。過去も未来もなく、ただこの瞬間です。気が付いたら終わってるやん、が僕の好きな映画だからです。

ファーストシーンは大好きです。『適切な距離』も始まり方は自画自賛です(笑)
是非とも観てみて下さい。
おっと、露骨な宣伝になりました。

ラストシーンも大好きです。『適切な距離』もラストシーンは自画自賛です。
おっと、また悪い癖が。
しつこいですね。ではさようなら。
2012-01-31 : 創作の過程 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

小説版『適切な距離』 第五回

************************************************

5.

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4月3日

父の家は、随分遠かった。

電車を3回乗り継いで、駅から降りて電話をかける。

緊張で、何度もボタンを押し間違えた。

向こうも緊張していたのか、1回目のコールで出た。

「駅に付いたよ。」と言うと、

「分かった。今から行く。」と、思っていたより低い声で返ってきた。

それからどちらも何もしゃべらず、でも電話を切るタイミングでも無くて、

気まずい間を埋めようとして、「改札の前に居る。」と言おうとした瞬間。

「雄一。」と控えめに呼ぶ声がした。

目を上げると、そこに、父は立っていた。

なぜだか懐かしいような気がして、涙ぐみそうになる。

昔の父なんか覚えていないのに、でも、それでも父だと確信できた。

名前を呼ばれただけじゃなく、何となく、あれが父なんだと分かった。

父は、ぎこちなく歩いてきて、

「向こうに、車止めてるから。」と言い、手を差し伸べて来た。

手を繋ぐのは、あんまりだとやんわり拒否すると、

父も手を差し伸べたのは無意識だったらしく、照れて大笑いした。

携帯からも、小さく笑い声が聞こえてきて、僕と父は、まだ携帯を切っていない事に気が付き、今度は二人で少し笑った。

駅から少し歩く。さっきの余韻があるおかげで、沈黙したままでも別に気まずく無かった。

古臭い軽自動車が父の車だった。

僕は後部座席に乗りこんだ。

「狭くて、すまんな。」と父が言い、ついでのように、

「大きくなったな。」と付け足した。

僕は、この人が父親なのかと、やっと実感が追いついてきて、その言葉に妙に舞い上がってしまった。

父の家まで車で10分間。

たどたどしく話した内容は覚えていない。

結構田舎に住んでるんやね。とか、コンビニあんまり無いね。とか、

そう言えば今、コンビニでバイトしているとか、

何とか話す内容を探したけれど、上手くいかなかった。

父は古い木造のマンションに住んでいた。

1DKの質素な部屋だった。

僕は、床に置かれたビジネス雑誌に目を通しながら、父は、適当なテレビ番組を横目に徐々に会話も交わした。

小さい一人用のテーブルの上に、父は、僕の赤ちゃんの頃の写真を並べた。

父の煎れたコーヒーを飲みながら、僕はそれを恥ずかしがりながら見た。

写真は数枚しか無かった。

「お母さんは、一枚も持たせてくれなかったからなあ。」

「これだけは、何とか持って来たんや。」と父は言った。

離婚当時の話を聞こうかなと思ったが、何と言っていいか分からなかった。

「仕事は順調?」と代わりに聞くと、

父は優しい顔で僕の写真を見ながら、「まあなあ。順調やな。」と言った。

「雄一は?大学は楽しいか?」と聞かれて、僕は返事に困った。

「楽しいって感じじゃないけど、順調。」とだけ言い、就職活動のことは黙っていた。

「そうか。無理はするなよ。」と言って、父は笑った。

それから日が暮れるまで、父と僕は微妙な距離を保ちながらも、会話をした。

父は思っていたより老けていて、優しげだった。

僕はどう映ったんだろうか。

結局は、込み入った話なんて一つもしなかったけれど、何となく父の事が分かった。

帰りの駅までの車の中。

父はふいに「彼女とかはおるんか?」と聞いてきた。

いきなりな質問で、僕は視線を窓に向けて、答えをはぐらかした。

安東の事を思い出していた。小学生のでは無く、喫茶店で待つ方の。

特徴的なホクロが窓の上に浮かぶので、打ち消すように窓を開けた。

駅前だが、車通りは少ない。静かな街の音がした。

「また来るわ。」と車を降りる間際に言った。

「いつでも来てええよ。週末は家にいるから。」と父は嬉しそうだった。

「それじゃあまた、来週。」と言い、別れた。

父とは上手くやれそうだった。

家に帰ると、夕食がテーブルの上に出来ていた。

母は無言で食べていて、僕の分は、ラップがかけられていた。

僕は電子レンジで暖めながら、相変わらず会話の無い静けさで、先ほどの余韻が消えていくのを感じていた。

今日の母の日記には、斉藤と礼司と母の三人で楽しく夕食を取った事が書いてあり、覗いている僕まで惨めな気持ちになった。

父のことをもっと書きたいと思う。礼司や斎藤なんてものを打ち消すための完璧で優しい父を。

礼司はすでにこの家の中に気配すら感じさせている。

僕も父の事をもっと詳しく知らなければ。


***

4月10日

再び父の家に行った。

今日は夕食も一緒に食べた。

「ロクな店知らんくてなあ。」と父は詫びながら、

ファミリーレストランで食べた。

ふいに、「父親が居なくて、つらい思いしてきたか?」と父は切り出した。

僕は無かったと答えるべきか、迷ったが、正直に話した。

「小学校の頃は、露骨に先生に言われたりしたなあ。父親が居ないから、しつけが出来てないんだとか。そのたびにオカンはブチ切れてたな。僕は別にそこまで嫌とも思わなかったけど。」

「まあ、オカンが切れれば切れるほど、先生は、ほらなって顔で僕を見たからなあ。そこだけ腹が立ったな。」

「見返せ。見返せ。ってオカンはそればかりやったからなあ。小学校とか高校まで。でもまあ、大学からは言わなくなったな。だって、見返すような能力無いって分かったんやろうなあ。」

父は、僕の話を黙って聞いていた。

僕自身、こんな話を誰にもしたことが無かったが、父相手だと不思議と話せた。

話し終わると、恥ずかしくなってドリンクバーへ立った。

席に戻ると、父は少し泣いていたようだった。

「本当に苦労をかけてしまった。雄一にも、お母さんにも。」と深く頭を下げた。

僕は聞きたかった事を、思い切って聞いてみた。

「どうして、オカンを殴ったん?離婚の原因ってそれなんやろ?」

父は涙を拭いて、真っ直ぐ僕を見ながら話した。

「全部悪いのはお父さんなんや。」

「お父さんの稼ぎが少なかったからお母さんにも働かせてしまってな、家事もさせてしまって、お母さん、大変やったからなあ。それでも弱音を言う人やないから、溜め込んでしまったんやろうなあ。それで、いつからか、お父さんとギクシャクしてもうてな。」

「お父さんに器量が無かったから、喧嘩もようするようになってきて。」

「それで、つい、カッとやり返してしまってな。本当に申し訳なかった。」

「やり返したって?」

「ああ、いや、やり返したというかな。まあ、お父さんが加減付けずに手を出したんや。」

「オカンもやったんやろ?ヒステリーやし。むしろ、オカンの方がやってたんやないん。」

「いや、男が女に手を出したらあかんよ。絶対にな。」

「肋骨が折れたとか、顔の形変わったとか、本当なん?今話してるお父さんが、そんな事するとは思えないんや。オカンは何かあったら、ボロボロに殴られたとかそう言うけど、それは本当なん?」

父はそれには答えなかった。

「本当は、そこまでじゃないん?」

父は、しばらく黙った後、うつむいて、「手を出した、お父さんが全部悪いんや。お母さんは何にも悪くないよ。」と言った。

それだけで分かった。母の方が嘘を付いていたのだ。そこまで殴られてはいない。もしそこまでしていたなら、今の父は、そう認めるはずだろう。僕に許して欲しいと言うんなら全て打ち明けられるはずだ。そして母をかばって、「そうだ。お父さんが殴ってお母さんは肋骨が折れた。」とも言えないのは、息子である僕にそういう人間だと思われたくないのだ。

だからこそ、どちらとも言えないでいる。たぶん、そうなのだろう。

「オカンのヒステリーで、僕も結構ひどい目にあってるよ。」

「宿題やらなかったりとか、ご飯残したりだとか、そういう理由だけで、ブチ切れ。めちゃくちゃに暴れて。小学校から高校までずっと。」

「虐待やで。あんなん。力で負けると思ってからは、ネチネチ言うようになって。」

愚痴る僕を制して父は言った。

「責めたらあかんよ。お母さんはな、必死なんやろう。子育ても仕事も全部やらないとあかんからな。大変なんや。」

「分かってるよ。ある程度は。でもまあ、一生許せないってのもあるよ。ストレスのはけ口みたいな感じだったし。」

結局、前回のように和やかな話にはならずに、終始、母への恨みを話していたような気がする。

父はその度に、母をかばい、僕に許すように言っていた。

父だって、母にむちゃくちゃ言われたはずなのだ。人としての尊厳を否定するような。

実際、僕が言われたような、生まなければ良かっただとか、お前が居れば不幸になるだとか、そういう事よりももっと酷い事を受けてきたはずなのだ。それでも、父は許せと言う。父は、母を許しているのだ。そして、許してもらいたがっている。父は頑なだった。

ファミレスで別れ、家まで帰る。

母は居間でテレビを見ていた。

母の日記を読もうとするが、日記帳が無かった。

少し辺りを探してみたが見当たらない。

今さらになって、隠したのだろうか。

馬鹿らしくなってやめたんだろうか。

僕の日記を覗くのもやめるだろうか。絶対にそれは無いだろう。

どうせ、僕に見せたくないような日記を書いているのだ。

例えば父を否定するようなくだらない出来事を。

構わない。僕だって父に否定させるのだ。母を。

こうなった原因が母にあると何としても優しい父に認めさせたかった。


***

4月17日

今週も父の家に行った。

気恥ずかしいような空気はほとんど無く、お互いざっくばらんに近況を話した。

あいにくの雨だったので、どこにも出かけず、部屋で話し込んだ。

高橋と居ても、一方的に相手が話すのを聞くだけなのに、

父といると、不思議と僕も饒舌になる。

新学年が始まった大学の事。4回生にもなって単位が心細い僕は、1コマ目から授業がある日が2日もある。まだ語学の単位も危ない。そういう愚痴を、父は嬉しそうに聞く。そして父親として厳しく、僕を激励する。

高校までの母は、勉強のことに関しては、とにかく干渉して来た。数万もする自宅学習のツールや、塾を無理やり強要し、監視していた。僕が逃げ出すとヒステリーを起こし、暴れまわっていた。今では全くの無干渉だ。父はそういう母の行為も、自分の時間を削って働いて、何とか雄一のためになるようにと頑張ったんだとかばう。僕は、あれは自己満足だと言うと、父は悲しい顔をした。

僕は思い切って、今の母と僕の関係を父に相談してみた。

会話はほとんど無く、将来に関しての話もした事が無いと。

そして、日記の事も話した。僕の日記を隠れて読んでいること。

自分の日記では、死んだ弟と嘘ばかりの生活を書いて、僕を殺していること。

父は複雑な顔をして、慎重に言葉を選んでいた。

「雄一とお母さんが、そうなってしまったのは、お父さんのせいなのかもしれん。」

「だけど、お父さんに今出来ることは無いから、それは2人が何とかしないといかんのやと思う。」

「色々問題はあるんやろうけど、まずは、会話をした方がええな。」

「お父さんと話してることを、お母さんにも話してみたらええ。」

「お父さんのせいやないよ。」

「昔は話もしてたんやで。ほとんど話さなくなったのは、僕が大学入ってからかな。いや、第一希望のとこが落ちて、すべり止めのすべり止めしか受からなかった時からかな。明確にそっから変わった。」

「それまでは、何をするにも、良い大学に行け。将来のために今頑張れ。つらいのは今だけや。とか、こっちがノイローゼになるくらい言ってきたけど、しょぼい大学に受かった途端に、もう何も言わないもん。公務員になれとか、頼んでも無い資料をわんさか取り寄せてたくせに、何も言ってこない。見きりを付けたんやで。」

「こいつは、無理やったんやなって。それで気が付いたら僕やなくて、礼司や。礼司に期待しとるねん。」

「ひどくない?僕、知らない間に死んでたんやで。産まれなかったことにされてるんやで。」

「そんな相手に一体何が話せるん。無理やで。もうあれとの関係は完全に終わってる。見てないんやもん。僕のこと。」

「それは、ひどいな。そうなってしまうのは間違っていると思う。」

「そうやな。でもまあ、僕も直接は言わないよ。やめろとか。逆にそれくらいしか喜びがないんなら、書けよと思うけどね。惨めやわ。ほんま。」

「やり直したいとは思わへんのか?」

「もう無理やな。」

「お父さんが居てくれたらいいと思うよ。お父さんの元で暮らしたいと思う。」

「正直、あれを親と思うのは無理やで。」

「自分勝手で、ヒステリーで、被害者意識が強くて、僕からお父さんを奪って、監視して、僕を殺して。」

「とても、一緒に暮らしてはいかれへんよ。」

父は何も言わなかった。言えなかったのか。

「すまん。」とつぶやいたあと、自分を責めるように、押し黙っていた。

「お父さんは優しいな。絶対オカンをかばうんやな。」

「かばってるんじゃないよ。お父さんが悪いんや。全部。」

「そんな事ないよ。全部なんて。背負い込まんでや。」

「ごめんな。つらい思いさせて。」

何を言っても父を責める気がして、それ以上は何も言えなかった。

父も、うつむいたまま、何も話さなかった。

こんなはずでは無いのに。僕はただ、全て悪いのは母だと言ってほしいのに、父はあくまで頑なに首を振る。

父の部屋から大きな桜が見えた。

良い散歩日和だ。それが余計に悲しかった。

駅に着き、僕は無言で車を降りた。

父はなかなか車を発車させず、僕も歩き出さなかった。

しばらくして、運転席の窓ガラスが開き、

「いつか、雄一の家に行けたらいいなと思ってる。」と言った。

「うん。ええよ。いつでも。」

「お父さんに出来ることがあったら、何でもするから。」

「うん。ありがとう。」

「こっちこそ。ありがとうな。」

「うん、じゃあ、またね。」

「ああ。またな。」

父はゆっくりと遠ざかっていった。

帰宅する。母は夜勤なので居なかった。

歯がゆかった。

僕が欲しかったのは完璧に優しい父であり、その父を追い出した母の汚い姿なのに、優しい父であればあるほど、どう話しても父が責任を負おうとしてしまう。

おかしな話だ。自分で作り出したくせに、自分の思いどおりにならない。

ここ最近の日記を読み返した。父に会いに行った日から。

確かに僕は父と会っていたような気がする。

それが怖くもあり、不思議と嬉しかった。

母も、こういう風に礼司にハマってしまったのだろうか。

頭の中に今日の帰り際の父の顔が浮かんだ。

優しそうな顔。古く地味な車。名前の知らない駅前の景色。

それらがはっきりと浮かんだ。確実なリアリティを持って。

2歳で去った本当の父親の顔を、僕は覚えてないのに。

恐ろしくは無かった。無性に泣きたくなった。

こんな父親であれば、きっと最後まで母をかばうのだろう。

母親の言い分まで理解し、それでも自分が身を引いて、責任を背負う。

それが父親なんだろう。

来週、また父に会いに行ってしまうだろう。
もはや母を否定したいのではなく、会ってまた話しがしたいから。
2012-01-29 : 小説版『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.18

イラスト『適切な距離』
MiyabeHono
http://miyabehono.blog.fc2.com
適切な距離とのコラボ企画No.18

teki_illu18.jpg
2012-01-29 : イラスト『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

試写会情報

この度、第7回CO2にて大阪市長賞(グランプリ)と主演男優賞(内村遥)をW受賞したチーズfilm制作映画『適切な距離』(大江崇允監督、94分、16:9、ブルーレイ、カラー、日本)の試写が決定いたしました。
入場無料!
ご来場をご希望の方は下記のアドレスまで「試写会入場希望」と書いたメールをお送り下さい!

ただ座席に限りがありますので、申し訳ありませんがキャンセルだけはないようご配慮いただければ幸いです。

○日時
2月28日(火)
○場所
映画美学校試写室
(住所:〒150-0044東京都渋谷区円山町1-5KINOHAUS地下1階)
○時間
15:30~
(※会場は15:00~)
○入場条件
試写会用フライヤーを持参頂くか、下記のアドレスに「試写会予約希望」と書いたメールを送って頂くかが必要となります。入場無料。
○イベント
監督・キャストによる挨拶の他、ゲストを招いたトークイベントも企画中。
○お問い合わせ
ご予約、ご質問、いつでも気軽にご連絡下さい!
bluecheesefilm@gmail.com
2012-01-29 : 試写会情報 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

原作者について

原作者について

どうも、大江です。
今日は原作者の菊池開人について書きます。原作というか物語と脚本の根幹を設計したのですが。
『適切な距離』の物語評価の八割は菊池の手柄です。

菊池とは大学時代からもう十年来の付き合いです。一緒に劇団も旗揚げましたし、今度は映画を結果的に作りました。結果的にというのは『適切な距離』が映画を想定して書かれたものではなかったからです。

菊池のテキストの凄いところはとにかく画が浮かぶところです。彼の体を通した文体で綴られる文章、だからまとまりがなかったりもするのですが、その文章に余白があることが映画と僕には良い方へ作用します。
映画はカメラを使って何かを切り取る行為です。小説や論文のように滑らかに言いたいことを言えたりはしません。ゴツゴツしている印象です。シーンとシーンの間には必ず描かない時間が大量に存在します。その余白こそが映画であるとさえ確信を持てます。
僕の妄想と菊池の言葉がコミットしていけるのは、きっとこの余白があるからではないでしょうか。
ついつい奴の才能を世に出したくなります。

奴は愉快な奴です。女が好き過ぎて愉快です。何故かモテるのもわらけます。
ただ本を書くのが遅いのが難でしょうか。もう三年は書いていません(笑)
2012-01-29 : 創作の過程 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

原作について

原作について

どうも、『適切な距離』監督の大江と申します。
先日から映画についてやいのやいのと書いて行こうと決めたので書きます。
良ければちょいとお付き合い下さい。

『適切な距離』の原作は菊池開人という僕の大学の同期の作家が書いた小説です。小説と言えばこれまた舌触りの良い響きですね。実際は形にはまらない「テキスト」としか呼べない代物です。主人公の日記が日付付きで書かれているだけという。これはこのブログでも読めますので、もし良ければ読んじゃって下さいな。
しかし原作がそんなんでええのんか?
いや、いいんです。これで。
このテキストをどう料理してやろうかと考えられるわけです。
結果、このテキストは舞台芸術、映画、小説と色んなところで別の人間によって発表されたんですから。

二年前、一度は映画化を諦めました。理由は本の中に主人公の現実、母親の現実、本当の現実という三種類の現実ができ来て、これを映画として表現するのが難しいし面白くないと感じたからです。だけど、逆手に取ってみました。全てを主人公の見た世界として一本化したら面白いと。
自分では素晴らしい案だなと思いました(笑)
2012-01-27 : 創作の過程 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

内村遥|大江雅子|スチール「適切な距離」

内村遥|大江雅子|スチール「適切な距離」
Photography by miyuu|yashicaflex|Kodak PORTRA400|二重露光

yuji_b.jpg
2012-01-27 : スチール『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

内村遥|スチール「適切な距離」

内村遥|スチール「適切な距離」
Photography by miyuu|yashicaflex|Kodak PORTRA400|二重露光

yuji_cc.jpg
2012-01-27 : スチール『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

辰寿広美|時光陸|佐々木麻由子|スチール「適切な距離」

辰寿広美|時光陸|佐々木麻由子|スチール「適切な距離」
Photography by miyuu|yashicaflex|Kodak PORTRA400|二重露光

kazumi.jpg


2012-01-27 : スチール『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

試写会情報

東京試写会決定!

この度、第7回CO2にて大阪市長賞(グランプリ)と主演男優賞(内村遥)をW受賞したチーズfilm制作映画『適切な距離』(大江崇允監督、94分、16:9、ブルーレイ、カラー、日本)の試写が決定いたしました。
入場無料!
ご来場をご希望の方は下記のアドレスまで「試写会入場希望」と書いたメールをお送り下さい!
細かい手続きなんていりません。
ただ座席に限りがありますので、申し訳ありませんがキャンセルだけはないようご配慮いただければ幸いです。

○日時
2月28日(火)
○場所
映画美学校試写室
(住所:〒150-0044東京都渋谷区円山町1-5KINOHAUS地下1階)
○時間
15:30~
(※会場は15:00~)
○入場条件
試写会用フライヤーを持参頂くか、下記のアドレスに「試写会予約希望」と書いたメールを送って頂くかが必要となります。入場無料。
○イベント
監督・キャストによる挨拶の他、ゲストを招いたトークイベントも企画中。
○お問い合わせ
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2012-01-27 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.15

イラスト『適切な距離』
MiyabeHono
http://miyabehono.blog.fc2.com
適切な距離とのコラボ企画No.15

クレヨンにはじかれて薄まるタイトルが、宣材写真のイメージとかさなるな、と思った。
無数の文字は日記の中にかかれていた言葉たち。
90%たてがき(→主人公のことば)
10%よこがき(→母のことば)
重なりそうで重ならない2人の関係を描きました。(MiyabeHono)

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2012-01-26 : イラスト『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

映画『適切な距離』創作の経緯

創作の経緯

CO2に応募してみないか?
と、CO2実行委員長でプラネットプラスワンの館主でもある富岡邦彦さんから言われたのが始まりです。
その年の頭に処女作『美しい術』がCINEDRIVE2010という映画祭で監督賞を頂いたことで富岡さんとは知り合いました。CINEDRIVE2010の桝井孝則さん、葛生賢さん、富岡さんが始めて僕の映画を公で評価してくれたのでCO2に応募もできましたし、本当に感謝してます。

応募するにあたって『適切な距離』以外にも2つの企画がありました。でもやめたのは企画書としてだけで企画意図や物語を端的に表現できるのが『適切な距離』だったからです。
既に下地の物語が完成していますし、その後の創作も数ヶ月で終えることができそうだと見通しがたっていたというのも大きいです。時間との戦いになることは既にわかっていました。作品のお披露目である大阪アジアン映画祭の開催日が決まっていましたし、過去の監督経験者からもそうなると聞いていましたので。
こんなことが『適切な距離』の始まりです。
2012-01-26 : 創作の過程 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.14

MiyabeHono
http://miyabehono.blog.fc2.com
適切な距離とのコラボ企画No.14

母体と肉魂をイメージして描きました。360°見る角度でかくれていたものが出てくるのが映画のimageと合うなと思います(MiyabeHono)

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2012-01-26 : イラスト『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.14

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適切な距離とのコラボ企画No.14

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2012-01-25 : 未分類 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.13

MiyabeHono
http://miyabehono.blog.fc2.com
適切な距離とのコラボ企画No.13

teki_illu13
2012-01-25 : イラスト『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.12

MiyabeHono
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適切な距離とのコラボ企画No.12
teki_illu12
2012-01-25 : イラスト『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.11

MiyabeHono
http://miyabehono.blog.fc2.com
適切な距離とのコラボ企画No.11

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2012-01-25 : イラスト『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

01/24のツイートまとめ

tekisetsu

MiyabeHono(@irasutochou)イラスト版『適切な距離』。その12です。 http://t.co/i3pJcxgk
01-24 23:42

MiyabeHono(@irasutochou)イラスト版『適切な距離』。その11です。 http://t.co/VVpZXveV
01-24 23:41

“あんどーなっつ @an_dornuts :E・ライスフィールド「人はきるにはたやすいがきったあとは悔やめてならない」 ”『適切な距離』Twitter編を発表中。@an_dornuts と @shinsan3333 をフォローしてリアルタイム『適切な距離』をお楽しみください。
01-24 21:23

『適切な距離』の完全新作(姉妹編)『適切な距離Twitter編』をTwitterで発表中。全く新しい登場人物 @an_dornuts @shinsam3333 。まだ出会ってもいない二人の関係が適切な距離を保つ日は訪れるのだろうか。新感覚のリアルタイム観察型Twitterドラマ!
01-24 20:14

“しんさん @shinsan3333 : さぁ みんな!しんさんと友達になろう!”『適切な距離』Twitter編を発表中です。@an_dornuts と @shinsan3333 をフォローしてリアルタイム『適切な距離』をお楽しみください。
01-24 17:23

“斎藤さんは、この家が母子家庭だと知っているのだろうか。もし知らないのであれば、出来れば知って欲しくない。雄二を傷つけたくない。” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-24 12:40

“あんどーなっつ @an_dornuts : 卵子ってもう全部私の体の中にあるらしい。最初の方に並んだ卵、かわいそうだね。どんな気持ちなんだろ。”『適切な距離』Twitter編を発表中。二人をフォローして楽しんでください。
01-24 12:21

【告知】大江崇允監督、映画『適切な距離』の試写会を行います。2月28日15:30から渋谷の映画美学校試写室で行います。ご来場ご希望の方は @tekisetsu へメッセージを送って頂くか bluecheesefilm@gmail.com までご連絡下さい!入場無料です。
01-24 08:31

“しんさん @shinsan3333 :ところでコレって誰か観てるの・・・? ”『適切な距離』Twitter編を発表中です。@an_dornuts と @shinsan3333 をフォローしてリアルタイム『適切な距離』をお楽しみください。
01-24 07:31

2012-01-25 : Twitter : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.10

MiyabeHono
http://miyabehono.blog.fc2.com
適切な距離とのコラボ企画No.10

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MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.9

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適切な距離とのコラボ企画No.9

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MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.8

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MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.7

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MiyabeHono イラスト『適切な距離』No.6

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適切な距離とのコラボ企画No.6。



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01/17のツイートまとめ

tekisetsu

“夢を見た。 カッコウの夢だ。同じ顔をした僕と雄二がカッコウの巣にいた。 そこへ安東がやってくる。えさをくわえて。 安東の餌を僕と雄二で取りあうが、母親が僕を摘まみ上げて地面に叩きつける。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-17 23:15

【更新情報】菊池開人、原作小説『適切な距離』第四回 http://t.co/YrspP6j0  #小説適切な距離
01-17 23:07

“2月18日 ちょっとした事で母と口論になった。 母の日記で、雄二が線香を上げていた。 僕には耐えられない。”http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-17 10:41

“母に友人がいるかを、全く知らない。母の日記にも、そんな人は出てこない。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-17 10:41

“雄二はけなげに毎日おすすめの映画を母に教え、 母からすすめられた映画を絶賛する。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-17 02:50

2012-01-18 : Twitter : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

小説版『適切な距離』 第四回

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4.

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1月21日

母は僕に話しかけなかった。
朝仕事に行ったのを見計らって母の部屋に行き、日記を見た。

呑気に、

礼司が面白いと言っていた洋画を借りてみたが、
あまり面白くなかった。
自分が勧めた松本清張の小説は面白い面白いと言う。

などと書いてあった。
これは僕が先週借りていた、グローネンバーグの映画の事だろうか。
松本清張の小説なんて一冊も読んだことが無い。
他愛も無い日記だけに余計にうすら寒い。
僕の日記に混ぜた母当てのメッセージを読んでないわけは無かった。
日記を入れていた書類ケースの中身は綺麗に整理しなおされ、くしゃくしゃにした母の写真は綺麗に伸ばされて、今日の日記が書かれた場所に挟まれていたのだ。それらをあえて見せて挑発している。

僕も無視して今日も日記を書く。
しかし、いざ見られているとなると書きにくくもなる。
母のようにあんなに流暢に妄想が書けるのは凄い。

今日はバイトに行きいつもの常連に会ったぐらいだ。
ヤンキーに彼女が出来たようで、同じような黒のスウェットを着た同じような金髪の女が同じような姿勢で並んで立ち読みをしていた。
それぐらいだった。特に変化も無く。
来週からテストだ。そろそろ勉強しなくてはいけない。
じきに礼司も勉強をし出したりするんだろう。
恐ろしい。


***

1月28日

随分日が空いてしまった。
毎日テストだ。嫌になる。
イタリア語の問題が思いのほか解けた。
来週の英語さえ乗り越えれば4回生には上がれるだろう。
母は毎日日記を書いていた。
日記の中の礼司はテストを受けていない。というより、テストという記述が一切無かった。
母は大学を出ていない。きっと大学のテストというのが分からないのだろう。
礼司は大学から帰ると母に面白い映画を進め、晩酌に付きあい飲みなれない酒で顔が赤くなっていたりする。
ある日は自分では背の届かない台所の上の扉を開けて、母の好物の餅を取りだしてあげて一緒に焼いて食べていた。

テストの事を詳しく書けば、きっと礼司は夜遅くまで勉強し帰ってくるなりテストの山が当たったと大喜びで報告した。とかそういう日記を書くんだろうか。
実際の母は僕に背を向けてテレビを見ながらご飯を食べている。

無表情な顔でビールを飲み、僕がチャンネルを変えると鼻で短くため息を吐く。無言。

***

2月1日

テスト最終日を乗り越えた。とりあえず進級は問題無いはずだ。
久しぶりに高橋と晩飯を食った。テストは余裕だったらしい。
これで来年はほぼ授業も無く就職活動に専念できると得意げに話していた。
うらやましい限りだ。僕は来年もほぼ毎日大学に行かなければならない。専念する事も無い僕にはちょうどいいスケジュールなのかもしれないが。

テスト終わりの祝いに酒も飲んだ。
隠れ居酒屋だとか何とかへ、高橋に連れて行かれた。
天井が低い店内をぐるぐると案内され和室に入る。向かいの高橋の顔がぼんやりとするぐらい店内は薄暗い。
BGMもかかっていない静かな店だった。こういう小洒落た店を知っているとは意外だ。

最初は近況報告を互いにする。
テストの出来だとか、何か変わった事なかったかなど。
母のことはもちろん黙っていた。
その内、酒が回りだした高橋が、芝居の話を始める。
年明けからの稽古で、ようやく手応えを掴んだらしい。
僕はその芝居に参加しないので、変わりに大量のレポートを書かされる。まだ全く手を付けていない。頭が痛くなる。
高橋に、4回生になってからの予定を聞かれる。
特に何も無いとも言えず、とっさにインターンシップに興味があるなどと言う。
高橋は既にそれを利用して、不動産屋で働いていた。
僕はまた適当に相槌を打って、高橋からアドバイスをもらう。行ったふりをするために。
もう、何のための嘘なのかがわからず、自分でも馬鹿らしくなってくる。

帰宅。どっと疲れたが、とりあえず母の日記を読む。
また映画の話だ。ここ数日そればっかりだ。
礼司はけなげに毎日おすすめの映画を母に教え、
母からすすめられた映画を絶賛する。
そして二人で餅を食べる。最近ほぼ毎日、餅を食べると日記に書かれている。
ネタ切れなんだろうか。
今度二人で映画館まで行く!と、感嘆符付きで日記は締められていた。
馬鹿らしくならないのだろうか。この人は。


***

2月6日
特に何も無い。そろそろ溜まったレポートに手を付けなくては。
母は本当に映画を見に行ったようだ。日記に内容のことが詳しく書いてある。日記の中では、礼司よりも先に犯人が分かった母の得意げな描写があるが、一人で行ったのだろうか。こんなサスペンス映画を。
母に友人がいるかを、全く知らない。母の日記にも、そんな人は出てこない。

餅を食べたとまた書いてあったので、
何かあるのだろうかと、台所の上にある引出しを開けてみた。
餅は未開封のままあった。そういえば正月、テーブルの上に置いていたのを、僕がここにしまったかもしれない。

母の身長ではここに届かない。
これを僕に言うために、しつこく日記に書いていたのだろうか。
踏み台くらい自分で買ってくればいいのに。
一つ焼いて、いちいち戻すのも面倒なので、餅はオーブンの横に置いておいた。
母は帰宅し、何も言わずに餅を焼いた。
無言で背を向け、食べている。
気味が悪い。直接言えよ。日記で遠まわしに言うことか。
読んでいる事は分かっているぞというアピールなんだろうか。
礼司に没頭しといてくれ。

***

2月13日
レポートが間に合いそうに無い。バイト先でも書いている。
バイト中の方がはかどる。ようは、レポートより、バイトのほうが苦痛なのだ。

早朝に帰宅。母はすでに仕事に行った。
昨日は母の誕生日だったらしい。日記を読むまで知らなかった。
忘れてたわけじゃなく、初めて知った。
日記を読みに母の部屋に入ると、見なれないコートがタンスに掛けてある。中年が着るには若々しい、腰のところがくびれた形だった。

日記には、礼司と二人で、フランス料理のコースを食べ、
生まれ年のワインを買って帰り、そしてコートを二人で買いに行った。
と書いてあった。

息子と母という関係を少し超えている気がして、日記を読み返した。
映画に行ったりだとか、外食に行ったりだとか、誕生日を二人で祝ったりだとか、母の日常はそれなりに賑やかだ。だけど、登場人物は母と礼司だけ。どの日記にも礼司と何かをしたと書いてある。毎日。毎日。
気持ち悪くなってきた。
日記をめくる弾みで、手帳にかかったカバーが外れた。
赤いカバーと手帳の間に小さな冊子が隠れてあり、
その拍子には母子手帳という文字と、礼司という文字が書いてあった。
僕は思わず叫んだ。
異常だろ。
育ててるんだろうか。礼司を。そういう気持ちなんだろうか。
歪んでる。とても。深く。

母の日記では無く、これは、礼司の成長記録なのだ。
だから、礼司以外の他人は出てこない。

一呼吸置いて、部屋を見渡す。
真新しい小説やビデオが、所々にある。
今までも、僕が日記を書き始める前も、
こうやって密かに、礼司との生活のネタを探していたんだろうか。
タンスに下がった真新しいコートをもう一度見た。
いくらぐらいするんだろうか。安くは無いだろう。
本来なら、父親や職場の同僚や友人とすることを全て礼司に置き換えている。
この部屋にあるものから、礼司の気配が充満していた。
それが怖かった。
日記だけの遊びじゃなく、実際に母は礼司と暮らしている。
二人で仲良くコートを選んでいる様子が、ありありと浮かぶ。
僕にそっくりな顔で、母も嬉しそうで。

誕生日の日記は、こう締められていた。

礼司は、また仏間にワインを持っていった。
本当なら一緒にお酒を飲めたのにね。と悲しく言う。

そうだ。礼司の他に、登場人物が居た。
僕だ。そして僕は死んでいる。
いつか、僕を殺す気なんじゃないんだろうか。
怒りと恐怖で、思わずコートを掴んで足元に叩きつけた。
引き裂いてやろうかと思ったが、礼司の視線を感じたのでやめた。

***

2月18日

ちょっとした事で母と口論になった。
母の日記で、礼司が線香を上げていた。
僕には耐えられない。

***

2月21日

レポート終了。今日からはやっと暇になる。
映画でも観に行きたいが、礼司が気になって行けない。
母の日記の礼司は、テストで非常に好成績を取っていた。
僕とは真逆だ。

***

3月2日

夢を見た。
カッコウの夢だ。同じ顔をした僕と礼司がカッコウの巣にいた。
そこへ安東がやってくる。えさをくわえて。
安東の餌を僕と礼司で取りあうが、母親が僕を摘まみ上げて地面に叩きつける。

夢から覚めて、お告げかもしれないと、久しぶりにメールをチェックした。
安東からは届いていなかった。
どこかの喫茶店で、まだ僕を待っているのだろうか。
そう言えばと、母の日記を読み返す。
礼司に彼女は居なかった。
おそらく、そう言うことは書かないんじゃないかと思う。
礼司は友達と飲みに行ったりはしているが、誰と、どこで、という詳細は書かれない。
当たり前だ。これは母子手帳なのだ。
母から見た息子の記録だ。
だから、母と居ない時の息子の事は書けない。
礼司は彼女が作れないのだ。泊まりがけで遊びに行くような親友も。
それがとても嬉しかった。ざまあみろだ。
僕の日常は盗めても、安東や高橋は盗めない。

***

3月12日

久しぶりに。
でも特に書くことが無い。
日記を書くこと自体が、母の協力をしているようで嫌なのだ。
母の日記では、相変わらず礼司とあれを観たこれを観たと映画談義ばかりだ。

***

3月19日

バイトのシフトを一つ増やした。
入ったことの無い曜日なので、いくらか変化を期待したが、
やっぱり常連は変わらずだった。
そう言えば、ヤンキーの姿がマトモになっている。ピアスを辞めたようだし、携帯のジャラジャラしたストラップも無い。
たまに一緒に来た彼女の姿も随分と見ていない。
毎日見ていると、些細な変化に目が止まるもんだ。
向こうから見た僕は、何か変わっていることがあるのだろうか。

母の日記を読む。そういえばこれも毎日見ている。
なのに礼司は全然変化しない。退屈で短い。
それはつまり僕も変化の無い、停滞した毎日なんだろうか。複雑だ。

***

3月21日

安東を取られた。
母の日記に、礼司に彼女が出来たと書いてあり、
夕食を三人で食べていた。
名前はわざとらしくも、斉藤と言うらしい。
小学校からの同級生だそうだ。

***

3月24日

斉藤がまた来ていた。
三人で映画を観ていた。
登場人物が増えようが、やってることは変わらないじゃないか。
くだらない。

***

3月27日

斉藤がやって来た。
食事を食べて、3人で就職活動の話をしていた。
斉藤は出版業界に行きたいだとか勝手に書いてある。

喫茶店で待つ、特徴的なホクロをした安東を、母は殺したのだ。
勝手な情報で書き変えようとしている。
非常に腹が立つ。自分でも驚くほどに。
勝手に日記を覗かれて、勝手に僕の小さな喜びだった安東まで盗まれて、挙句には僕は死んだもの扱いだ。

いっそ日記を破り捨ててやろうかと思ったが、やめた。
そっちがその気なら、僕は僕で、お前を否定してやる。

そのための素晴らしい方法を考え付いた。

***

4月1日

高橋とバッティングセンターへ行く。
思いっきりフルスイングして、腰を痛めてしまった。
高橋に散々馬鹿にされながら家に帰ると、僕宛に一通の手紙があった。
差し出し人には、懐かしい父の名前があった。
僕は震える手で中身を読む。
そこには、とても綺麗な字で、

「離婚のとき、お前を引き取れずに申し分けなかった。
何も持たずに家を出たから、養育費もろくに払ってやれなかった。
今、やっと人並みの暮らしができるようになって、
もし許されるなら、お前の顔が見たい。 」

と、離婚後の父の後悔と、謝罪が6枚も綴られていた。
最後の便箋には、震える文字で、

「もし、私を許してくれるなら」

と、現在の父の住所であるだろう内容が書かれていて、
電話番号と、携帯のメールアドレスも書かれていた。

僕は父を恨んではいない。
確かに何度も母に暴力を振るっていたらしいが、
僕にはその記憶が無い。物心付く前の話なのだ。
だいたい、父の顔もよく思い出せない。
そして、そんな酷い父だったら、今更になってこんな手紙を送ってくるだろうか。
暴力を振るわれただとか、お前も酷い目にあわせれただとか、それらは全て母が勝手に言った事だ。
妄想の子供を育てるあいつの言うことがまともなはずは無い。
母が本当のことを言っていたのか、それともそれも嘘で父を悪者に仕立て上げていたのか、僕はそれを確かめたかった。
だから僕は父に会いに行こうと思う。
さっそく、今週末にでも。
2012-01-17 : 小説版『適切な距離』 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

01/16のツイートまとめ

tekisetsu

“実際の母は、僕に背を向けてテレビを見ながらご飯を食べる。 無表情な顔でビールを飲み、僕がチャンネルを変えると、 鼻で短くため息を吐く。無言で。” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-16 23:31

“残り5件ぐらいになった時、手が止まった。 件名に「お久しぶりです。安東です。」と書いてあった。 小学校の頃、ずっと片思いしていた女の子の名前が、安東だった。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-16 23:28

“お久しぶりです。覚えてますか?安東です。 あれから考えたんですけど、やっぱり私、待つ事にしたんです。 ずっと素直になれなかったのを後悔していて・・・。 だから、正直になることに決めました。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-16 08:10

“機械が自動的に文章を組んでるわけでは無い。誰かがわざわざ考えて、書いてるのだ。 どんな文面がだましやすいかなどを思考錯誤して、日々より効果的な内容を目指している人間がどこかに居る。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-16 08:08

2012-01-17 : Twitter : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

01/15のツイートまとめ

tekisetsu

“風俗情報誌を見ながら、首筋と鎖骨辺りにホクロのある女を捜してしまう。 激安ホテヘルの小さな広告の中で、目を隠した女の、首筋と両鎖骨にホクロがあった。 顔は分からないが、若そうだ。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-15 22:03

“1月16日 昨日、今日と、連続でヘルスに行った。 ついつい、安東と同じ肩にホクロがある女を探してしまう。 馬鹿だ。 しかし、見つからない。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-15 22:02

“就職してしまうと全て決まってしまうような気がする。 人生の先まで。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-15 02:37

2012-01-16 : Twitter : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

01/14のツイートまとめ

tekisetsu

“メールには一枚の添付写真が付いていた。 裸の状態の女が写っており、上手いことに首から上は切れていた。上半身が荒い解像度の中に浮かんでいる。 首筋に一つ、両鎖骨の横に一つずつ、特徴的なホクロがあった。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 23:23

“顔は小学生のままなのに背格好だけ大人な安東がぼんやりと浮かんで、そんな妄想をしてしまった自分を恥じなくては。と思うが、感傷的な気持ちが邪魔して、ついつい妄想の方を肯定したくなる。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 22:13

“ 子供だった安東はいつの間にか大人の姿になって、十年前の告白の返事を悩みつづけて、言いだせなかった自分に後悔して、何とかして俺に連絡を取ってきた超純情で一途な女性になって頭の中で立ち上がってくる。” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 17:56

“お久しぶりです。覚えてますか?安東です。 あれから考えたんですけど、やっぱり私、待つ事にしたんです。 ずっと素直になれなかったのを後悔してて・・・。 だから、正直になることに決めました。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 08:28

“母残り5件ぐらいになった時、手が止まった。 件名に「お久しぶりです。安東です。」と書いてあった。 小学校の頃、ずっと片思いしていた女の子の名前が、安東だった。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 08:27

“機械が自動的に文章を組んでるわけでは無い。誰かがわざわざ考えて、書いてるのだ。 どんな文面がだましやすいかなどを思考錯誤して、日々より効果的な内容を目指している人間がどこかに居る。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 01:42

映画『適切な距離』関係者による思い出ツイート始めました。ハッシュタグは #私と適切な距離 よろしくお願いします。
01-14 01:39

2012-01-15 : Twitter : コメント : 0 : トラックバック : 0 :

01/14のツイートまとめ

tekisetsu

“メールには一枚の添付写真が付いていた。 裸の状態の女が写っており、上手いことに首から上は切れていた。上半身が荒い解像度の中に浮かんでいる。 首筋に一つ、両鎖骨の横に一つずつ、特徴的なホクロがあった。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 23:23

“顔は小学生のままなのに背格好だけ大人な安東がぼんやりと浮かんで、そんな妄想をしてしまった自分を恥じなくては。と思うが、感傷的な気持ちが邪魔して、ついつい妄想の方を肯定したくなる。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 22:13

“ 子供だった安東はいつの間にか大人の姿になって、十年前の告白の返事を悩みつづけて、言いだせなかった自分に後悔して、何とかして俺に連絡を取ってきた超純情で一途な女性になって頭の中で立ち上がってくる。” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 17:56

“お久しぶりです。覚えてますか?安東です。 あれから考えたんですけど、やっぱり私、待つ事にしたんです。 ずっと素直になれなかったのを後悔してて・・・。 だから、正直になることに決めました。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 08:28

“母残り5件ぐらいになった時、手が止まった。 件名に「お久しぶりです。安東です。」と書いてあった。 小学校の頃、ずっと片思いしていた女の子の名前が、安東だった。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 08:27

“機械が自動的に文章を組んでるわけでは無い。誰かがわざわざ考えて、書いてるのだ。 どんな文面がだましやすいかなどを思考錯誤して、日々より効果的な内容を目指している人間がどこかに居る。 ” http://t.co/6CX2UhvY 菊池開人 #小説適切な距離
01-14 01:42

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プロフィール

tekisetsu

Author:tekisetsu
映画『適切な距離』

2012年9月1日(土)~14日(金)連日21:00~新宿K's cinemaにて公開が決定した大江崇允監督最新映画『適切な距離』公式blog。第7回CO2にてシネアスト大阪市長賞(グランプリ)。主演の内村遥が男優賞受賞。断絶した親子関係。生まれなかった弟と母の幸せな生活。久々のコミュニケーションは、母の嘘の日記だった。

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