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内村遥、大江崇允監督インタビュー

横浜にある内村遥のよく通うカフェにて。
その日は内村が監督の大江をエスコートし、二人で内村の地元をブラブラした後、このカフェへ立ち寄りインタビューは始まった。
この時既に3時間俳優や映画の未来について語り合った後であります。内村はビンのハートランドを3本あけております。
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-『適切な距離』出演の経緯は?
2010年11月頭ぐらいに話をもらって、その時舞台をやっていたのでそれが終わるまで待ってもらったんです。大江さんが映画撮るから手伝ってって聞いて、「僕に出来ることあったらやりますよ」って言って。主演だと思ってなかったんだけど『適切な距離』ではプロデューサーで入ってる戸田っちに「主演やで」って言われてビックリしたのは覚えてますね。だから大江さんに会う前から悩んでたんですよ。それで原作の小説を頂いて読んで、「俺は凄く良いと思うんだよ」って当時付き合っていた彼女にも読んでもらったら「これあなたのことじゃないの」って言われまして。でも役がでかいしね。あと自分に負う部分が強いなと、雄司と母親の…。プレッシャーの塊でしたね。で、大江さん達に会いに渋谷のお世話になったお店に行ったら見事に大江さんと三浦君(撮影監督)が喧嘩して(笑)。なに喧嘩してんだって。でもあの時の三浦君は格好良かったですけどね。桜井さん(撮影)もそこにいて、桜井さんが間にいてくれたから、その四人だから役を負えるかなってその時は感じました。彼女に「あなたが主演やれるなんて一生で一度かもしれないよ」って失礼なことを言われました(笑)

-で、やることになって大阪にやって来たと。リハーサルで印象に残ったことは?
稽古は実際芝居をしたっていう感覚はなくて。台本はずっと家にこもって読んでいたんで。最近、自分の言い易いように変える役者が多い気がするんですよ。それも間違っていないんですけど、大江さんの脚本は緻密にイメージして書かれていたので、それはおとしたくなかったんです。だから一字一句全て覚えるっていうことは大事にしました。その中でさらに関西弁に乗せるとどういうニュアンスになるのかっていうのを探っていました。感情的になるとアクセントが曖昧になってしまいますし。方言持っている人にはちょっとでもアクセントがずれると観てもらえない。人間って耳に入る音は重要だなって。関西弁はテーマでもありましたね。あと、門真市っていうのはでかかったなあ。新世界みたいな観光地となる大阪じゃなくて、大阪の生活がかなり見えるのが門真市でしたね。僕は今では大阪っていうと門真を想像しちゃう。下町ですよね。
稽古ではあと空間把握は意識しました。撮影で使う雄司の暮らす家だし、自分の部屋って目を閉じて歩くことができるはずなので、その練習をしました。カメラが狙っているところがどこだろうが階段に辿り着くことができるように探りました。

-稽古自体には何かあった?
うーん。まあ台本読みましたけど、ほぼ大半が話し合いだったんじゃないかなあ。こうやってお茶をしているのとあまり変わらないような(笑)。もちろん台本はやりましたけど、それが本番に直結したかというと微妙で、実際は雄司という人間の過去を探る作業を監督はしてくれて、それと今の雄司を探していました。今の雄司を見つつ、過去にあった雄司と両方からつめて行った感じです。僕が思う雄司はこうあってほしいというものと過去のことをどうやって一致させていくかと。最初話していて《希望》だっていうことだったから、小説の最後も希望で終わって行く訳で、その希望へどう攻めて行くかという感じでした。

-撮影に入っては?
寂しかったです。ずっと一人だから。スタッフさんが助けてくれるけど、共演者のお母さん(和美:辰寿広美)とは役として仲良くないから極力撮影中も話をしないように。外で食事とかもなくて。だから一人でした。寂しいというか、きつかったですね。部屋撮って、部屋撮って、ずっとそれなので。何がきついってそれだけならいいんですけど、それで午前中撮ったら午後弟の礼司(時光陸)の明るいシーンとなるとみんなの雰囲気が変わるんです。わーってなって。それを聞きながら奈良の戸田君家に帰るってしんどいですよ(笑)。人を恨んでいる荒んだものを撮るっていうのと母親と仲良く楽しい会話を撮っているのではみんなの気の持ちようが変わって来るし。それは僕の被害妄想や稽古中の荒みから来ていたのかもしれないですけど(笑)。拍車をかけましたね。
大江さんが途中で「僕の事を怒ってる?」って言ったんですよ。怒ってないですけど、自分の荒みが休憩中にまで出ちゃっていたんじゃないですか(笑)。とにかく一人ですからね。稽古終わって銭湯行って寝て、をずっと繰り返していたんで。あえて誰にも連絡はしないし。雄司という人間は電話が得意ではないというイメージがあったから携帯はあんまり触らないようにしていました。だから銭湯でニュースを知るっていう。歌舞伎の人が殴られたっていうのとかその時期でしたね(笑)。銭湯が僕の情報源だし心休める場所でした。

-スタッフはどうだった?
やりやすかったです。もう家族的な感じでした。照明の三浦チームは役者につけないのでそんなに話せなかったですけどね。とにかく衣装増川さん、メイク平野さん達が常々見てくれていたっていうのはありますね、監督の知らないところで。僕の顔が赤いって言われて、ちょっと体調が…、ってなると風邪薬くれるし、もうあの二人がいなかったら駄目でしたね(笑)。いやあ、助かりましたよ。
僕は怒鳴っている現場が嫌いなんです。大学生からプロまでいたけど、大学生だから何かが出来ないということはなくて、そりゃ知らないことは多いでしょうけど、全員の気持ちがCO2上映展への完成に向かないと絶対うまくいかない現場だというのは顔合わせの時点でわかりきっていたことだから。
楽しかったですよ。今回みたいにあんまりスタッフさん全員の名前を覚えて帰るっていうことがなかったから。
映画という僕がずっと憧れていた場所だから、悔いを残したくなかった。スタッフさんの名前を覚えていないとか、そういうのもなくしたかった。ちゃんと全部を自分の中で終えて、ケツを拭きたかったというね。そういうのはありました。


内村インタビュー その2

先日の『適切な距離』インタビューの続きです。
内村は軽快にビールを飲み続けております。聞き手は監督の大江です。

-周りの俳優とはどうだった?
あんまり接さなかったですね。稽古では色々話しましたけど、本番入ってからは一人になろうとしている時間が多かったですし、特に(弟・礼司役の)時光とは距離を置かないとと。あの器用さには腹が立っていました(笑)。腹が立っていたというか、それすらも利用しようとしていました。で、本格的に礼司を恨んでいました。多分雄司はそうなんじゃないかなと。

-監督について何かある?
録音する前に色々もう言っちゃいましたからねえ(笑)。うーん。大江さんはねえ、まあ緻密ですよ。設計図がかなりしっかりしている。
一番謎だったのはリハーサル中に稽古も何もない日なのに(内村氏が寝泊まりしていたロケ地に)お茶漬けを食いに来たことがあったんですよ(笑)。「家具の配置を…」とか言いつつ、全然家具の配置なんて見ないで「なんかお腹すいたなあ」とか言い出して、「なんか食べさせてよ」とか言って俺のナケナシのお茶漬けを食べて行きました。まあ食べるのはいいとして、そっからねえ、五時間ぐらいいたんですよ(笑)。そこで、お茶漬けをと言いつつ内村遥として辛かったこととか母親に対してどうだったんだとか話の方向がずれて行って、また荒ませて帰って行ったんですよ(笑)。だからあのお茶漬けはなんだったんだろう。謎でした。

-稽古の帰りとかじゃなかったっけ?(笑)
違いますよ。何にもない日ですよ。台本読んでたら電話掛って来て「今から行っていい?」っていきなり来たんですよ(笑)。



-おかしな奴だね(笑)。
クランクインまでの話をすると、そんな感じの日常が続いていましたね。
twitterにも書いたんですけど、ここまで生きて来て結構忘れてることは多いですよね。しんどいこともそうだし、嬉しかったことも。楽しいことだけ忘れるってよく言いますけどそんなこともなくて、辛いことと楽しいことは表裏一体ですよね。辛いことを思い出せば面白いことも出て来るし、単純にその時の記憶が抜けているっていうことはありましたね。それは大江さんと話して聞かれて、ねじり出して「ああ、親父とこんなことしたなあ」とか辛いことでそれを思い出したけど、同時にそれで良かったことも思い出すし、ぐっと自分に近付くって感じですかね。年を取るっていうことは人と関わって行くことだから、本来あるべき自分の正直な部分からちょっと離れて行かないといけないことがあるじゃないですか。この人とはこういう話し方をしようとか、この人の前ではこれは言わないようにしようとか。僕は凄くあるんですけど、そういうことは一回捨てて、単純に自分がどう思っているかということだけ。誰がどう思うことでなく、とにかく話す対象もいないし、見せびらかせる対象もいないから、自分にしか対象がない。だから本来の自分に戻るっていうか。あそこにいたっていうことは嘘とか作ったものではないってことですよね。逆に僕としては怖いんですよ。「暗っ!」ていう。自分に戻る作業、世間とかを全部なしにして、っていうのはあります。

-そうすると雄司という役と似ている部分も出て来たんじゃない?
そうですねえ…。雄司というか…。うーん。
なんか彼を演じる上で一番捨てたくなかったのは母親を絶対的に否定しない、どこかでは許容しているということを絶対持っておかないといけないなという気持ちはありました。恨みを倍増させて倍増させて自分が他人を恨むというのとは全く違う感覚、恨んでいるけどやっぱり親子だからって部分は守りたかったです。それが崩壊すると話も何もなくなっちゃう。魅力もくそもないかなと。でも逆にただの我儘な大学生ってなるのも嫌だし。まあ、頭で考えずとも自然と脚本がそうなっていたからそっちの方向には行かなかったですけどね。
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-他に演じる上で感じたこととかあった?
さっき話した自分の落とし所、役者として大阪に行ってやる落とし所として、やっぱり大江さんが『適切な距離』が駄目だったらやめるんだろうなとわかってたから、そこですよね。自分の芝居は足りていなかったし未だに課題だらけで満足はしてないんですけど、最低限のハードルはあって、役者が失敗したなっていう中で大江さんが映画やめるなんてことにはさせられなかったです。「僕が演出が出来なかったから映画が上手くいかなかった」とは言わせたくなかったっていうのはある。
格好良い言葉に聞こえるかもしれないけど、そうではなくて僕も次はないと思っていましたね。今も次があるかわからないですけどね(笑)。全然変わらないですけど。
とにかく次がないって思っている人に次があるって気持ちで挑みたくはなかったです。そこの芝居が追いつかなかった部分があったとしても、気持ちは多分CO2に関わったどの役者にも負けてなかったんじゃないかなって。というか、全ての役者に対しても負けてないんじゃないかと思います。
だからそうすると今まで自分を良く見せようとしていたことが恥ずかしく見えて来る訳で、格好良く見せようとすることは案外格好悪いことで、何かに臨むってそういうことではないと。昔はわかっていたはずなんですけどね。
小学生ぐらいの頃ってただ無心で何かに向かえていたんだろうと思うんです。年を重ねると対自分だったものが対他人になって行っちゃったっていうのはあるのかなあ。人の評価とかで。『適切な距離』はどうでも良かったっていうのはあるんですよね。ただ全精力をかけないとと。まあ、大江さんを辞めさせる訳にはいかないと。辞めなかったと思いますけどね。

-いやいや、駄目だったら辞めようと毎回思うよ。
そうなんですよ。僕もそうなんだけど。
結局映画って結果論になっちゃいますからね。結果論として捕らわれちゃうからこそ準備が大事っていう。臨む姿勢というか。結果論で駄目だったってなって、でも自分の中に何かがちゃんとあればそれは仕方ないってなる。映画だけじゃないですけどね。全部そう。
映画映画映画ってずっと18から言って来たもの、言葉の力はちゃんとあると思ったし、ひとつ良い映画になったんだと思うと、18から映画やりたいって言ってできないものもあったけど、良かったなというのはありますけどね。

-印象に残ったシーンとかあった?
周りから誉められたのは最後の方の交差点に立ちすくむシーンでしたね。あの前のシーンからの一連の流れが凄く良かったと言われました。孤独感というか。
僕自身の印象的なシーンはそりゃやっぱり序盤の酔っ払って自分の過去をネタで怒ったように暴露するところですよ。あんな風に酔っ払わないですけど(笑)。でもあの脚本を見て、芝居がなんだかあれだったっていう不思議な感じですよね。
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-「全力でやって」って演出で一瞬であの形になったんよね。
そう、あれは不思議で。あれがいいって思っている訳ではないんですけどね。恥ずかしいんですよ(笑)。恥ずかしいんですけど、第2回CO2の山田雅史監督(『天使突抜六丁目』)は「おもろかったで~」とか言って下さいましたね。目立つシーンなんで色んな人と飲むと「内村は酔っ払ったら弟の話をし出すから嫌だ」とかネタで言われたり(笑)。だから皆さんの中にはあのシーンが残ったと。でも不安だったんですね。上映後もあれがマイナスになってんじゃないかとか。感情で許されたりすることはないんですけど、この映画だったらこの感情まで、みたいなのが自分の中であって、それを超えちゃったんじゃないかなっていうのはあったんです。


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2012-02-04 : 創作の過程 : コメント : 0 : トラックバック : 0 :
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プロフィール

tekisetsu

Author:tekisetsu
映画『適切な距離』

2012年9月1日(土)~14日(金)連日21:00~新宿K's cinemaにて公開が決定した大江崇允監督最新映画『適切な距離』公式blog。第7回CO2にてシネアスト大阪市長賞(グランプリ)。主演の内村遥が男優賞受賞。断絶した親子関係。生まれなかった弟と母の幸せな生活。久々のコミュニケーションは、母の嘘の日記だった。

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